「…あの馬鹿また出掛けたのか…。」
部屋のベッドは整っていてそこに人が入った様子はない。
窓を見ると薄いカーテンが主を送り出したかのように揺れている。
大きな溜息をついて窓へ近寄ると、遠くから小さな人影が走ってくるのが見えた。
見間違う事はないこの部屋の主…。
「!」
深夜にも関わらず大声で影を呼んだ。
影はその声に驚き、急に動きを止めるとその場を動かなくなってしまった。
「手間かけさせるんじゃねぇ!早く来い!」
急速に落ちたスピードをともない影はゆっくりと戻ってきた。
部屋の窓までくると引きつった笑顔で俺を見上げていた。
俺は引きつる頬と今にも怒鳴りつけそうな気持ちを抑え、を部屋の中へと引きずりあげると窓を閉め大きく息を吸いこんだ。
「こっのおてんばが!こんな遅くまで何処行ってやがった!」
俺は溜まっていたものを吐き出す勢いで怒鳴りつけた。
は耳を両手で塞ぎ、きつく目を閉じていた。
の頭を軽く叩いてから耳を引っ張り上げる。
「…何処に行っていた。」
「て…天ちゃんと…捲兄のとこぉー…痛いよぉ金蝉!」
の声を聞いても手を緩めない。むしろ更に力を込める。
「当たり前だ!痛くなきゃ罰にならんだろうが!!」
最後に思いきり引っ張るとその手を離した。
は目に涙を浮かべながら自らの耳を擦っていた。
「天蓬の所へ行くのは構わん。昼間ならな…だが、捲簾の所にしかもこんな夜遅くに行って…少しは自分の体を考えろ!」
「…?」
不思議そうな目で俺を見ている。
こいつは自分が相手に与える影響力を知らんのか…。
「捲兄の所…昼ならいいの?」
「昼でも室内はやめろ。」
更にわからないと言う様子で首を捻る。
俺は今日一番のため息をついてからの部屋の扉に手を掛けた。
コイツに色恋の話をしても無駄だ…。
「とにかく、室内で野郎と二人きりにはなるな。以上だ。」
「金蝉ならいいの?」
「…保護者だからな。」
が真っ赤な顔で側にあった枕を投げ付けてきた。
それが体に当たるより先に扉を閉める。後にはお決まりの台詞が聞こえてきた。
「金蝉なんか大っ嫌い!!」
それを聞いて僅かに頬を緩め自室に向かって歩き出す。
隣にいるはずの悟空はこの騒ぎの中平然と眠っているのだろう。
俺は残りの仕事を片付けるべく自室の扉を開けた。
「金蝉なんて…」
投げ付けた枕を拾い上げぎゅっと抱きしめる。
帰って来た時に部屋にいるのが金蝉だと分かった時、少し嬉しかった。
心配してくれたんだと思った。
「それなのに、それなのに…いつもの倍も怒られたぁ…」
ふてくされてベッドに潜り込む。
不安が心に広がって行く。
金蝉に嫌われたらどうしよう。
呆れられてここにいられなくなったらどうしよう…。
様々な不安を胸に抱きつつ、明日は金蝉に謝る事を決意し瞳を伏せる。
瞳の裏には安らかに眠った二人の男と今日も不機嫌な男の姿が焼き付いていて、なかなか眠りに付く事が出来なかった…。
やっぱり怒られちゃいました(笑)
窓からヒロインを引き上げてますが、外伝の単行本読むと金蝉って・・・確か非力なはず・・・まぁそれは置いといて(おいっ)
よくよく考えれば、深夜捲兄の所へ行く事は・・・かなり危険ですよね(色々な意味で(笑))金蝉じゃなくても心配しますって!
金蝉すっかりヒロインの保護者です(笑)飼い主じゃない所が悟空と違う所(笑)
でもその他の扱いは殆ど一緒。でも一応女性扱いはしている・・・らしい・・・多分。
ここまで読んでくださってありがとうございましたm(_ _)m